小手(コテ)とはどういう意味

★はじめに

先日、埼玉県所沢市小手指の項を読んでいたら、小手の意味について、剣道の籠手(こて)、日本武尊が小手をかざして前方を見た、自生していた茨(いばら)とか、こんなのが地名の語源になるのかと思われるようなことばかりが書かれてあった。インターネットなどで見てみたら「コテ」という地名は北は東北から南は九州まであちこちにあるようで北海道と沖縄が除かれているので弥生地名と言うことになるようだ。当て字だとは思うが漢字では、小手(一番多いようである)、犢、鐺が、また、濁った場合は小出と書くようである。犢はコテとは読めず完全な当て字であるようだ。意味についてはその道の権威の先生は前述のような当てずっぽうなことは言わず、以下のごとく述べておられる。『地名用語語源辞典』(楠原佑介、溝手理太郎編)に曰く、

こて(犢、鐺、小手)
1.副詞コテコテ、動詞コテックなどの語幹のコテで、「ねばり気のある様子」をいうか。
2.コトの転か。1山頂(コツの転でもある)、2海岸などの突出する岩鼻(コツの転でもある)、3上州、信州で岩石累積して通過困難な谷(コツの転でもある)
3.コツの転か。
4.コデの転か。こで(小手、小出)1山畑(方言・広島県安芸郡)、2湿地(クテ、コタの転。<鏡味>)1はコ(小)・イデ(出)と同じく、「山に新しく開いた畑」の意か。

以上のようであるが、これだけでは具体的なことは解らないので、地名と地形・地勢等を検討してみなければならないと思われる。

★「コテ」の地名の主な具体例

*京都市左京区大原小出石町(こでいし) 四方を山に囲まれ、焼杉山(717m)の東北麓に位置する。
*青森県八戸市南郷大字大森小手ケ森(おおもりこてがもり) 小出ヶ森は大森の子村で、丘陵地である。
*秋田県山本郡八峰町峰浜小手萩(こてはぎ) 石川(竹生<たこう>川)に沿った台地上にある。
*栃木県宇都宮市鐺山町(こてやま) 鬼怒川の河岸場。後背地は標高116m前後。
*栃木県大田原市北滝字小手沢(こてざわ) 御亭山(こてやさん513m)山頂へ向かう沢沿いに集落が点在。
*茨城県猿島郡五霞町小手指(こてさし) 利根川右岸の沖積地に位置する。
*茨城県日立市十王町山部字小手ノ久保(こてのくぼ) 現在地不詳も十王町山部の標高は90m~150mほどの台地と思われる。
*埼玉県所沢市小手指町(こてさしちょう) 武蔵の台地上の原野。
*千葉市花見川区犢橋町(こてはし) 花見川中流左岸の台地上にある。
*愛知県東加茂郡足助町小手ノ沢(こてのさわ) 集落は久木川流域の小起伏面上の山麓に点在。
*高知県幡多郡三原村柚ノ木 天正18年(1590)の三原郷地検帳に「柚ノ木村」「小手村」とあり。現地で言う駄場(だば、台地上の平坦地)にあったか。
*長崎県南松浦郡新上五島町飯ノ瀬戸郷小手ノ浦(こてのうら) 五島列島上五島のリアス海岸。中世、倭寇が船団の基地にしていた。
*長崎県平戸市田平町小手田免(こてだめん) 釜田川流域に位置し、「高山ナク・・高低定リナシ」。
*香川県丸亀市広島町小手島(おてしま) 読みが「こてしま」ではなく「おてしま」であることに注意。

以上を見てみると「台地」とか「丘陵」と言われる微高地につけられた地名か。

★「コテ」の言語的意義

まず、一般には「小手」と書くのであるが、「小」は「こ」と読む場合と、「お(を)」と読む場合がある。以下、「角川 古語大辞典 第二巻」によれば、

「類義の小(を)との違いははっきりしないが、上代では「を」のほうが多く、「こ」が動物や植物、「を」が地象や器物などに多くつく傾向がある」と。従って、地名につく「小」の文字は古代では「を」と読まれ、「小手」は「をて」と発音されていたのではないか。丸亀市広島町小手島(おてしま)はその痕跡が残っていたもので「を」が「お」となったものと思われる。また、現在でも「小」を「お(を)」と読む例はままあるが、概して正調縄文語が残っていると思われる、北関東(栃木県、群馬県、茨城県)以北や北陸、東海、近畿地方が多いようである。中部山岳地帯(長野県、山梨県)や関東地方平野部、はたまた、中四国、九州は少ない。抽象的な作文では意味がわからないと言われたらそれまでなので具体的な地名を示すと、
東北
青森県弘前市大字石川字小山田(おやまだ)
秋田県秋田市上新城小又(おまた)
北関東
栃木県小山市大字小山(おやま)
群馬県前橋市富士見町小沢(おざわ)
茨城県東茨城郡小川町(おがわまち)現在は小美玉市
北陸
富山県氷見市小久米(おぐめ)
石川県鳳殊郡(ほうすぐん)穴水町字小又(おまた)
東海
愛知県額田郡額田町大字小久田(おくだ)
静岡県伊豆市土肥町小土肥(おとい)
近畿
奈良県吉野郡東吉野村大字小(おむら)
滋賀県蒲生郡竜王町大字小口(おぐち)
など。

「小手」の辞書的語義では「小さな(こどもの)手」ほどの意味で地名とはあまり関係がないようである。また、反対語と思われる「大手」も手の大きさを示すもので、肩から指の先まで。手の全体、を言う。例として、 大手を広げる ・ 大手を振る、などだそうで、地名にはなり得ない。
ほかには、「高手小手(たかてこて)」という語句があり、「厳重に捕縛するさまを言う」とある。「高手の縄」「小手の縄」とも表現されており、高い方と低い方という意味かとも思われる。高手の位置があってそれより低いものを小手というのか、小手の位置があってそれより高いものを高手と言うのかはっきりしないが、小手は相対的に低い位置を言うようである。

★まとめ

「コテ(小手)」の読みについては、おそらく、上代にあっては「ヲテ」であったと思われる。地形的にも台地や丘陵地を指すようなので、類義の言葉に「丘・岡(ヲカ)」があり、「ヲテ」と「ヲカ」は同じ語根から発生しているのではないかと思われる。「尾根」という言葉もあり、「尾」とは地形に関して言うと「山裾の、なだらかに延びた部分。<山の尾>」とある。「なだらかに延びた部分」というのが緩傾斜があるのかどうか、段丘があるのかどうか、横に伸びているのかどうか、尾根が平地まで一直線に伸びているのかどうかなどによってニューアンスが異なると思われるが、私見の勝手な解釈で山から伸びた段丘と解釈すると高知県で言う「駄場」(台地上の平坦地)となるのではないか。ヲカのカは住処(すみか)などの場所を表す接尾語と思われ、ヲテのテは山の手(やまのて)などのこれまた場所を表す接尾語ではないか。因みに、小手の反意語は平手(大府市長草町平手前)と言うことか。
以上よりヲテ(小手)の地名のついた土地は少しばかり小高い台地にあり、小手指なら「台地の上の焼畑地」、小手萩なら萩を「崩壊地形」のことという説もあるが、沖積地の微高地を言うのではないか。従って、コテ(ヲテ)(小手)は台地や丘陵地、沖積地ならその微高地のところを言うのではないか。

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