掃守とは

★はじめに

宮廷の清掃関係の仕事は雄略天皇の頃に制度化されたようで、
「新撰姓氏録」神別に、
「和泉国/神別/天神/掃守首/首/振魂命四世孫天忍人命之後也/雄略天皇御代。監掃除事。賜姓掃守連」とある。
これと、斎部広成の「古語拾遺」にある、
「天祖彦火尊 娉海神之女豐玉姫命 生 彦瀲尊 誕育之日 海濱立室 干時 掃守連遠祖天忍人命 供奉陪侍 作箒掃蟹 仍 掌鋪設 遂以爲職 號曰蟹守 【今俗謂之借守者 彼詞之轉也】」
とを考え合わせると、蟹守とか掃守とか掃部などの読みは「カニモリ」が本則のようである。
また、「和名抄」に出てくる、河内国高安郡掃守郷、和泉国和泉郡掃守郷では、「和名抄」東急本の和泉国掃守郷に「加尓毛利」と読みがついている。もっとも、平安時代以降は加守郷と表記し、「カモリ」と読むのが一般的になっているようである。
「新撰姓氏録」では、上記、河内国、和泉国の掃守氏以外に、山城国、大和国にも掃守氏がいた。山城国と大和国はいずれも都のあるところ、ないし、都のあったところで、現職、元職が在住していたと言うことであろう。出身地が河内国と和泉国に分かれるのは雄略天皇の時代の重臣は大伴大連室屋と物部大連目がいて、双方が推挙した者を採用したものではないか。河内国は物部氏の勢力下にあり、和泉国は大伴氏の勢力下にあったと思われる。長官には和泉国の掃守首の項に「監掃除事」とあるので、和泉国の掃守氏がなったのではないか。しかしながら、少しばかり気がかりなのは、河内国式外社に、「『三代実録』巻二六貞観十六年(八七四)十二月◆癸未廿九日。授常陸國正五位上勳七等薩都神從四位下。從五位下天之白羽神。天之速玉神並從五位上。河内國正六位上掃部神。佐渡國正六位上花村神並從五位下」とあることで、河内国のどこの掃部神かはわからないが、おそらく高安郡掃守郷にあった神社ではないかと思われる。これに対し、和泉国掃守郷には兵主神社があり由緒書には「延喜式内社を注解した『神社覈(かく)録』という本に は「兵主神社、兵主は音読也、祭神明也、南郡掃守郷西之内村に在す」とある」という。祭神は兵主神で実体は、明治時代は八千鉾大神、日本武尊、現在は天照大神 (合祀) 菅原道眞、八幡大神である。
そこで、神社が違うと言うことは住む氏族が違うのかと思い、「新撰姓氏録」で拾ってみると、

和泉国

右京/皇別/掃守田首/首/武内宿祢男紀都奴宿祢之後也
和泉国/皇別/掃守田首/首/武内宿祢男紀角宿祢之後也
左京/神別/天神/掃守連/連/ 振魂命四世孫天忍人命之後也
和泉国/神別/天神/掃守首/首/振魂命四世孫天忍人命之後也/雄略天皇御代。監掃除事。賜姓掃守連

河内国

河内国/神別/天神/掃守宿祢/宿祢/振魂命之後也
河内国/神別/天神/掃守連/連/同神四世孫天忍人命之後也
河内国/神別/天神/守部連/連/振魂命之後也  (守部は掃守部の上略か)
河内国/神別/天神/掃守造/造/同神四世孫天忍人命之後也

となっており、和泉国には紀角宿祢系一族と振魂命系一族とが混在していたようである。これに対し、河内国掃守郷は振魂命系一族だけである。従って、和泉国掃守郷の兵主神社は掃守田首一族が祀っていたものと思われる。紀氏は後世的に言う武門の家柄と考えられているからである。
つらつら考えるに、和泉国の掃守氏は本当は掃守田氏で大伴氏と紀氏との親近関係から掃守田氏が大伴室屋に就職斡旋を依頼したのではないか。室屋も室屋で紀小弓宿禰との関係を見るごとく面倒見のいい人だったようで内廷メンテナンスの職を世話したようだ。しかし、掃守田氏は人材が続かなかったのか、飽きてしまったのか、すぐに同郷の掃守氏に下請けに出し、掃守氏が掃守部の長官になったようだ。

★「カニモリ」の語源

「カニモリ」は漢字で「掃守」と書いているにもかかわらず、おいしい食べ物の蟹を連想し、「蟹守」と当て字していろいろ諸説を呼び起こしているようだ。ちなみに、「掃」の意味については国語辞典に『 掃[音]ソウ(サウ)(呉)(漢) [ 訓]はく  はらう1 ほうきでごみを除く。「掃除 (そうじ) /清掃」2 じゃまものを平らげる。「 掃射・掃討・掃滅/一掃』とあり、古くより 「ほうきでごみを除く」行為を言ったようで、さればこそ、「古語拾遺」に<作箒掃蟹>とあるのである。一方、蟹であるが以前は「カ(甲、殻)ニ(丹)即ち、甲羅が赤いこと)」説が有力だったが、今はほとんど消滅した感じで、蟹の語源は日本語ではなく漢語の「蟹」は「カイ」と発音し、カイがカニになったとする説が有力である。東アジアの言語にはカニを意味するカイとかカニの類似音が多いという。とはいえ、「カニモリ」の「カニ」は甲殻類のカニではなくほかの日本語かとも思う。「モリ」は管理者の意味であろうから、「カニモリ」とはカニを行うものを管理するものの意味であろう。掃除とはゴミをかき集めることなので、「掻き」に注目してみるとこれまた語義が多義に渡るようである。「デジタル大辞泉」の清掃に関わるような語義としては<2 手やそれに似たものであたり一帯にある物を引き寄せたり押しのけたりする。「雪を―・く」「手で水を―・いて進む」>が該当するようである。「カニモリ」は本来は「カキモリ」であり、これが<イ音便>で「カイモリ」となり、最後に上述の蟹がカイからカニになったように、カイモリがカニモリになったものではないか。即ち、蟹守、掃守、掃部は全部「カニモリ」と発音し、意味は<掃守部>の長官と言うことになろうかと思われる。

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