賣布神社とは

はじめに

全国に僅かだが売布神社という神社が散見する。延喜式神名帳には七社がありそれを列挙してみると、

1.賣布神社[めふ] 祭神「豐宇賀能命、素盞嗚命」
京都府京丹後市網野町木津女布谷217
2.賣布神社[ひめふ] 祭神「豐受姫命、大屋媛命、抓津媛命」
京都府京丹後市久美浜町大字女布字初岡724
3.賣布神社[めふ] 祭神「大賣布命 配 毘沙門天、稻荷大明神」
兵庫県豊岡市日高町国保字山ノ脇797
4.賣布神社[めふ] 祭神「速秋津比賣神 配 五十猛命、大屋津姫命、抓津姫命」
島根県松江市和多見町81
5.高賣布神社[たかめふ] 祭神「下照比賣命 配 天稚比古命」
兵庫県三田市酒井宮の脇50
6.賣布神社[めふ] 祭神「高比賣神 配 天稚彦神」
兵庫県宝塚市売布山手町1-1
7.賣夫神社[めふ] 祭神「大鞆和氣命」
但し、「祭神は人皇第10代崇神天皇の御母の弟伊香色雄命の御子大咩布命である」と
主張をする関係者がいるらしい。
愛知県稲沢市平和町嫁振81

「賣布」の読み方は「めふ」「ひめふ」の二通りがあるようであるが、現在は「めふ」が優勢である。

祭神は京丹後市網野町と久美浜町の賣布神社は主祭神を豊受大神としてそろっている。また、地名からも京丹後市の二社は「女布」(女布権現山)と言う地名に負っているとも考えられる。三田市の高賣布神社の祭神・下照比賣命と宝塚市の賣布神社の祭神・高比賣神は同一神とも姉妹神とも言われている。配祀されている神が同じ天稚比古命なので同神は下照比賣命の夫神とされ、高賣布神社の下照比賣命と賣布神社(宝塚市)の高比賣神は同一神と言うことか。

賣布神社はどこを発祥の地としているか。
と言えば、やはり地名、祭神がそろっている現在の京丹後市の女布権現山のあたりか。なお、女布という地名は舞鶴市女布もありこちらは読みを「まいづるし にょう」という。おそらく、「めふ」の当て字を決める際、「め」に「女」の字を当て、これを音読みで「にょ、にょう」となったものであろう。「にょう」を「にゅう」とか「にう」とか言って漢字の「丹生」を当て水銀産地説が後を絶たないが、いかがなものか。また、「丹」の字は赤土を意味すると言い、粘土や顔料を言う、と言う説も、間違った仮定の下での説で賛成できない。そもそも、「丹波」は『和名抄』では、「太迩波(たには)」と訓み、その語源として「谷端」説と「田庭」説すなわち「平らかに広い地」がある。今は後者が有力と言う。したがって、丹波の丹は硫化水銀や赤土とは関係がないのではないか。

祭神の豊受大神は何の神様か
神名の「豊」は美称として、「受(うけ)」は、一説によると1.槽(うけ)の意味と2.保食(うけ)の両様の意味があり、いずれもウカツ(穿つ)の派生語で、中が穿たれて空っぽの大きな容器の意味という。一般に、槽(うけ)は古事記に汗氣(うけ)と書き、空の入れ物。たらいのような容器。うけぶね。「天の石屋戸(いはやと)に汗氣伏せて踏みとどろこし」〈記・上〉と言うが、実体は不詳という。保食(うけ)については、ウカノミタマ(倉稲魂)とは穀霊を保持する倉の神格化である、と言うが、それ自体は正としても、穀物(米)が我が国に入ってきてからこの方、米の保管はもっぱら高床式倉庫で行われたのであり、これは建築する際は穿つのではなく組み立てるのである。穿つと言えば地中を掘って地下倉庫でも造るのであろうが、そんなところに米を保管しない。「うけ」は食物を意味すると言う説が多いと思うがそれでも内容はまちまちのようである。
それでは豊受大神の「うけ(受)」はいずれの意味なのだろうか。我が国の神々は、こと、食べ物に関する限り女神(天照大神、保食神、大宜都比売など)がほとんどなので、食物の神とも考えられるが、この神が歴史上に登場し、伊勢神宮に祀られるようになった経緯を考えると、「うけ(受)」は槽(うけ)の意味であり、しかもその意味するところは今日で言う「船」のことかと思う。伝説によれば「豊受大神」の本性は、羽衣伝説の八人の天女の一人で、里人の和奈佐という老夫が一人の天女の衣を隠し、無理に連れ帰り、一緒に暮らして、万病にきくという酒を天女が上手に作り、和奈佐の家は栄えていった。しかし、天女が邪魔になり、家から追い出した。天女は泣く泣く荒塩の村(荒山)にたどりつき、のち哭木(なきき)の村(内記)から舟木の里の奈具の村(弥栄町奈具)に落ち着いた。この天女とは豊宇賀能売命(とようかのめのみこと)つまり、豊受大神(とようけのおおみかみ)のことである、と。まあ、話半分としても、豊受大神は「舟木の里の奈具の村(弥栄町奈具)」の人々に祀られていたのであろう。「舟木の里」と言うくらいだから、住人の多くは舟木の伐採や造舟に携わっていたのではないか。したがって、豊受の「受」は槽の意味であり、舟のことと思う。雄略天皇の時代になって国家の情勢が混沌としてきたので丹波の舟木部は伊勢への移住を要請されたのではないか。その時、彼らの守護神も移動したものと思われる。船のことを女性とするのは多くの言語であるようなので豊受大神が女性であっても何の不都合もない。

「賣布」の意味は
舞鶴市女布は古代には彌布(祢布)と書いたが、中古から今の名に改められた、と言う。また、一書に金峰神社の「奥院二天之御中主命ヲ祀り禰布ノ神ト云フ」とある。彌布(祢布)は「ねふ」と読むのであろう。賣布と禰布はまず禰布と発音され、次いで、賣布と変換したもののようだ。そこで、まず、禰布の意味を考えると、地名があるのでそれを列挙してみると、
北海道 ねふた村  松前郡松前町館浜 15世紀半ばには道南12館の一つ禰保田館が所在していたとされる。
秋田県 根布屋小路 土崎湊加賀町(秋田市)に根布屋小路 住人の松本某が下記の石川県根布の出身という。
石川県 ねぷ    河北郡内灘町大根布 戦国期から近世初頭までの地名。
神奈川県 根府川村 小田原市根府川 北条家朱印状に「根府川塩屋之材木」とある。永禄6年(1563)11月。
京都府 禰布    舞鶴市女布の旧称か。
長崎県 ねふ    対馬市美津島町根緒 根浦の意の地名という。

以上を概括すると、1.小田原市根府川を除き日本海側の地名である 2.近くに小河川や海がある 3.ルートを描けば北海道より日本海沿岸を通って朝鮮半島南部に到達する航路である。おそらく縄文時代からある地名なので稲作とは関係ないのではないか。思料するに移動にまつわる用語かとも思われる。移動手段とするなら「船」、中継地を意味するなら「港」とかその種の言葉であろうかと思う。まず、船の意とすると、「ねふ」は「ふね」を逆に発音したものであり、出現の順序は「ねふ」→「ふね」の順であろう。そもそも船の語源は1.フネ(容器)説 曲げ物のフネ、岩船寺のフネ 2.ヘ(容器)の転じた「フ」に、ネ(接尾語、動くもの)を加えた語、などがあるが、1.フネ(容器)説は語源に語源を返すようで正当とは言えない。2.ヘ(容器)説は正当な語源説の一つではあろうと思う。私見ではフネのネは漢字で書くと根となり、地面や水面の下の方を指し、根から水が漏れて入らないようにふさぐものが、いわゆる、木造の「フネ」でもっとも原初的には「ねふた」(根を塞ぐ、の意)と言っていたか。あるいは、現実的に当時の船は雨や雪などが入らないように蓋をしていたのかも知れない。余談になるが、「ねふた」で思い出されるのは青森県の「ねぶた」で、あれは元々は船だったのか。また、三内丸山遺跡の「六本柱建物」も祭りの際の櫓にも見えてくる。青森県の「ねぶた」の歴史は5000年もあるのかという思いだ。本論に戻すと、「ねふ」がどのようにして「ふね」に代わっていったかも検討しなければならない。兎にも角にも、「ねふ」の地名のあるところは小河川などがあり、我々のご先祖様ははじめからいきなり大海にでたわけではなく、小河から大河へ、大河から大海へと一漕一漕櫂を進めたのではないか。
「賣布」の意味だが、松江市の賣布神社の由緒書きに、『めふ』とは「海藻や草木の豊かに生えること」とかかれてあると言い、少し敷衍した説明で「め」(海藻)と「ふ」(生)となっているくらいなものだ。元祖とも思える京丹後市の賣布神社は地名先行のようである。

まとめ

とりとめもないことをかいたので、まとめてみると、

1.「メフ(賣布)」については、「メ」「フ」と分けて考えると、「メ」は海岸に多い地名という。あるいは、「ウミ(海)」(特に、ミ)の転か。但し、この場合の「メ」は海藻のことで、しかも浜に打ち上げられたような海藻ではなく海の中に林立する海藻で、「メ××」の地名は海人(あま)の居留と関係があるか。「フ」は、地形名彙で「~になっているところ」の意味という。「メフ(賣布)」とは単純に「海のあるところ」の意味なのか。無論、松江市の賣布神社の由緒書き、『めふ』とは「海藻や草木の豊かに生えること」と言うのはもっとも理にかなってはいる。

2.「船」は、「ネ(根)フタ(蓋)」が、「ネフ」と下略され、「ネフ」が倒語して「フネ」となったものか。少しばかりしつこいことはしつこい。但し、丹後半島の方では船(フネ)をウケ(槽)と言っていたか。発想的には、意味は違うが「身も蓋もない」(露骨なこと)と同じかとも思う。

3.青森県の「ねぶた祭」の起源は、ネフタ(船)に漁・猟(りょう)などでとってきた魚や動物、場合によっては堅果類などの食物をのせ、今で言う市場で物々交換したのが始まりではないのか。現在の「ねぶた祭」はあまりにも変わりすぎて原意が解らなくなっているのではないか。

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